この記事の要点
時効の進行を止めるしくみには「完成猶予」と「更新」の2つがあります(2020年改正前の「停止」「中断」にあたります)。
完成猶予は、一定の事由がある間、時効の完成が一時的に止まること(例:催告から6か月、裁判上の請求の係属中)。更新は、それまで進んだ期間がリセットされ、ゼロから新たに進行し直すこと(例:確定判決による権利の確定、権利の承認)です。
完成猶予は「一時停止」、更新は「ゼロからやり直し」という違いを押さえましょう。
時効は、一定期間が経過すると権利を取得したり(取得時効)、権利が消滅したり(消滅時効)する制度です。その期間の進行を止める手段が「完成猶予」と「更新」で、2つは効果が大きく違います。
| 完成猶予 | 更新 | |
|---|---|---|
| 効果 | 一定の間、時効が完成しない(一時停止) | 進んだ期間がリセットされ、ゼロから新たに進行 |
| 進んだ期間は | そのまま(消えない) | 消えて0に戻る |
| 旧法の呼び方 | 停止 | 中断 |
| 事由 | 効果 | 条文 |
|---|---|---|
| 裁判上の請求・支払督促・和解/調停・破産手続参加など | その手続中は完成猶予 → 確定判決等で権利が確定すれば更新 | 147条 |
| 催告(裁判外で支払いを求める) | その時から6か月は完成猶予(更新はしない) | 150条 |
| 権利の承認(債務者が借金を認めるなど) | その時から更新(ゼロから進行) | 152条 |
注意したいのは催告です。催告は6か月の完成猶予を生じさせるだけで、更新(リセット)はしません。しかも、完成猶予されている間に再度催告をしても効力はありません(150条2項)。確定的に更新させるには、6か月の間に裁判上の請求などの強い手段をとる必要があります。一方、権利の承認は、それだけで更新となります。
完成猶予と更新は、効果の違い(一時停止かリセットか)と、各事由がどちらにあたるか(催告=完成猶予のみ、承認=更新など)を問う形で出題されます。取得時効・消滅時効のどちらにも関わる共通のしくみなので、時効とセットで整理しておきましょう。
Q. 時効の「更新」が生じると、それまで進行していた期間はリセットされ、ゼロから新たに進行する。○か×か。
○。更新(旧・中断)は、進んだ期間が消えてゼロから進行し直します。完成猶予(旧・停止)は一時的に止まるだけです。
Q. 催告をすれば、その時から時効が更新され、ゼロから進行し直す。○か×か。
×。催告は、その時から6か月の完成猶予を生じさせるだけで、更新(リセット)はしません(民法150条)。
Q. 債務者が債務の存在を承認したときは、時効は更新される。○か×か。
○。権利の承認があったときは、その時から時効が更新され、新たに進行を始めます(民法152条)。
完成猶予は時効の完成が一時的に止まること、更新は進んだ期間がリセットされてゼロから進行し直すことです。催告は6か月の完成猶予のみ、確定判決による確定や承認は更新になります(民法147・150・152条)。
「完成猶予=一時停止/更新=リセット」「旧停止=完成猶予/旧中断=更新」を押さえましょう。
参考にした資料
・民法147条(裁判上の請求等による完成猶予及び更新=手続中は完成猶予、確定判決等で権利確定したとき更新)、150条(催告による完成猶予=その時から6か月・再度の催告は効力なし)、152条(承認による更新=その時から新たに進行)を条文で確認(2020年4月施行の改正後。旧「中断」=更新、旧「停止」=完成猶予)
※法令は改正されることがあります。最新の条文をご確認ください。内容確認日:2026年6月13日。
まちがえやすいポイント
完成猶予は「一時的に止まるだけ」で進んだ期間は消えず、更新は「ゼロからやり直し」です。催告は6か月の完成猶予を生むだけで更新はしません(再度の催告も無効)。これに対し、確定判決による権利確定や権利の承認は更新になります。旧法の「停止=完成猶予」「中断=更新」の対応も押さえましょう。