この記事の要点
登記識別情報は、登記名義人本人であることを確認するための符号で、かつての「権利証(登記済証)」に代わるものです。
通知されるのは「申請人自らが登記名義人となる場合」、つまり所有権保存・所有権移転などの権利の登記のときです(不動産登記法21条)。建物表題登記などの「表示に関する登記」では、表題部所有者になるだけで登記名義人にはならないため、登記識別情報は通知されません。
このほか、通知を希望しない申出があった場合など「通知を要しない場合」(規則64条)や、登記識別情報の有効証明(規則68条)も整理しておきましょう。
登記識別情報とは、登記を申請するときに、その人が登記名義人本人であることを確認するために用いる符号です。アラビア数字とその他の符号を組み合わせた12桁の情報で、平成17年の不動産登記法改正で、それまでの紙の「権利証(登記済証)」に代わるものとして導入されました。
土地家屋調査士が主に扱うのは表示に関する登記ですが、表示の登記と権利の登記とで登記識別情報の扱いが変わるため、「誰に通知されるのか」を正確に押さえておく必要があります。
不動産登記法21条は、登記識別情報の通知について、「登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、(中略)速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない」と定めています。ただし、申請人があらかじめ通知を希望しない旨の申出をした場合などは、この限りではありません(同条ただし書)。
通知されるかどうかは、「申請人自らが登記名義人となる場合」という条件で決まります。ここでいう登記名義人とは、登記記録の権利部に所有権などの権利を登記された者をいいます(法2条11号)。したがって、所有権保存の登記や所有権移転の登記のように、権利部に名義が入る登記をして、自分がその名義人になったときに登記識別情報が通知されます。
これに対して、建物表題登記や土地の表題登記のような表示に関する登記では、表題部所有者として記録されるだけで、権利部の登記名義人にはなりません。そのため、表示に関する登記をしても登記識別情報は通知されません。
| 登記の例 | その人の地位 | 登記識別情報 |
|---|---|---|
| 所有権保存・所有権移転 | 権利部の登記名義人になる | 通知される |
| 建物表題登記・土地の表題登記 | 表題部所有者にとどまる | 通知されない |
権利の登記で申請人が登記名義人となる場合でも、次のようなときは登記識別情報が通知されません(不動産登記規則64条)。21条ただし書の「その他の法務省令で定める場合」にあたります。
| 場面 | 通知されない理由 |
|---|---|
| 通知を希望しない旨の申出をした | 申請人が自ら通知を辞退した(あらかじめ申出) |
| 電子データで受け取る方式で、通知から30日以内に受領(ダウンロード)しない | 受け取られないまま放置されたため |
| 書面で受け取る方式で、登記完了から3か月以内に受領しない | 窓口等で交付を受けなかったため |
| 官庁または公署が登記権利者となる(通知を希望する申出がある場合を除く) | 公的機関が当事者の場合の取扱い |
「希望しない申出」と「受け取らずに期間が経過した」「官庁・公署が登記権利者」がポイントです。一度通知されなかった登記識別情報は、後から通知を求めることはできません。
登記識別情報そのものは秘密の符号なので、本人かどうかを確かめる場面では「証明」の制度が使われます。登記名義人やその相続人などの一般承継人(またはその代理人)は、登記官に対して、登記識別情報について次の証明を請求できます(不動産登記規則68条)。
登記識別情報が他人に知られたおそれがあるときなどには、登記名義人等が失効の申出をして、その登記識別情報を使えないようにすることもできます。取引の前に有効証明を取得して、本人性や情報の有効性を確認するといった使われ方をします。
令和4年度(午後の部)では、登記識別情報について、通知を受ける者の範囲、代理人が関わる場合の通知、証明の請求の方法、官庁・公署が当事者となる場合の通知の取扱いなどが、複合的に問われました。「申請人自らが登記名義人となる場合に通知される」という21条の原則と、「通知を要しない場合」「証明の請求」をあわせて整理しておくと対応できます。
Q. 建物の表題登記を申請して表題部所有者となった者には、登記識別情報が通知される。○か×か。
×。登記識別情報が通知されるのは「申請人自らが登記名義人となる場合」(不動産登記法21条)です。表題部所有者は権利部の登記名義人ではないため、通知されません。
Q. 申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合は、通知されない。○か×か。
○。21条ただし書・規則64条により、通知を希望しない旨の申出をした場合は通知されません。
Q. 登記名義人は、登記識別情報が有効であることの証明を請求することができる。○か×か。
○。登記名義人やその相続人などは、規則68条により、有効であること・通知されていないこと・失効していることの証明を請求できます。
登記識別情報が通知されるのは「申請人自らが登記名義人となる場合」で、所有権保存などの権利の登記が対象です。建物表題登記などの表示に関する登記では、表題部所有者になるだけなので通知されません(不動産登記法21条)。
あわせて、通知を要しない場合(希望しない申出・受領期間の経過・官庁公署が登記権利者/規則64条)と、有効証明などの証明請求(規則68条)を押さえておきましょう。
この論点が問われた過去問の解説です(新しい年度から順)。
参考にした資料
・不動産登記法21条(登記識別情報の通知)/「申請人自らが登記名義人となる場合」に通知・ただし書の不通知について、条文本文で確認
・不動産登記規則64条(登記識別情報の通知を要しない場合)/規則68条(登記識別情報に関する証明=有効証明・不通知証明・失効証明)で確認
・令和4年度 午後の部(登記識別情報の通知・証明)/法務省 公式問題
※制度・取扱いは変更されることがあります。最新の情報は法務局・法務省でご確認ください。内容確認日:2026年6月13日。
まちがえやすいポイント
建物表題登記をしても、表題部所有者には登記識別情報は通知されません。登記識別情報が通知されるのは、所有権保存などで自分が権利部の登記名義人になったときです。表示に関する登記と権利に関する登記を混同しないようにしましょう。また、官庁・公署が登記権利者となる場合は、通知を希望する申出がない限り通知されない点も引っかけになりやすい部分です。